2022.10.7
南房小湊沖のシマアジ
2022.7.25
この春、勝浦沖に数年ぶりのヤリイカの回遊があった。皮肉なことにコロナ禍で楽しむことはかなわなかったが、ヤリイカの回遊によって気になっていた魚があった。それがイシナギ。イシナギはヤリイカが大好物。ここ数年、かつての大型が少なくなっていた千葉県勝浦沖のイシナギの回遊にも変化があるはずと虎視眈々と狙いを定めていた。
予想通り、勝浦川津港の基吉丸さんで釣果が上がり始めたとのことで、7月15日にさっそく乗船させて頂いた。
今回のタックル
スルメイカ用
ロッド:極鋭ヤリイカAGS(旧モデル)
リール:シーボーグ500JS
PE:UVFメガセンサー12ブレイドEX+Si 4号
イシナギ用
ロッド:マッドバイパースティング175
リール:シーボーグ800MJ
PE:UVFメガセンサー12ブレイドEX+Si 8号
私は左舷ミヨシに釣り座を構えた。4時に港を離れてまずはエサとなるイカを釣る。本来は生きたヤリイカが最高のエサなのだが、生憎この時期の勝浦沖では手に入らない。スルメイカを釣ってから本命のポイントへ向かう。だが、今シーズン勝浦沖のスルメの回遊は遅れ気味。目標を5杯として、始めはMDスティックミラー18cmのブランコ仕掛けでのんびり一杯づつ釣るつもりで臨んだ。
サバの邪魔があるのでスルメも難なく釣れると思っていたが大間違い。船中一杯目が上がったのが一時間後。そこで、直結仕掛けに替えて集中してアタリに掛けていくことに。何とか4杯を確保してイシナギのポイントに向かった。とかく大物釣りと言うと本命に気が行きがちになってしまうが、生き餌の確保に神経を使わなければ始まらないことを痛感する。予備としてスーパーで買い求めた生のスルメを多めに持ち込むことも必要だ。
本命のポイントは60~80メートルとイシナギのポイントとしては驚くほど浅い。潮通しの良いポイントであることに加えて生きたスルメイカをエサとするのでオモリは重めの250号。
着底したら3メートル前後タナを切ってアタリを待つ。底立ちが変化するのでこまめにタナを取りなおすことが大切だ。すると一投目からアタリ。これは食い込みが浅く、スルメイカがボロボロにされただけ。
イシナギ釣りでは早合わせは禁物。食い込むまでヒラメ並みの駆け引きをする場合もあるほど。大きな口にもかかわらず、エサをくわえて一気に反転して持っていくことは稀だ。アタリが有ってから根掛かりのようにガッツリ穂先が押さえつけられてから、大きくアワセを入れてハリがかりを確実なものとしたい。
その点、マッドバイパースティング175の穂先はしなやかでイシナギの食い込みを促してくれる。そして、抑え込んだアタリを大きく表現してくれることも美点だ。さらにヤリトリに持ち込んでからは強力なバット武器となってくれる。
私がエサを弄ばれていた間に反対舷の釣り人が25キロ弱のイシナギを釣り上げる。さらに次は86キロの超ド級。勝浦全体でもこのサイズは久しぶりであろう。
ここで、私は後悔する。仕掛けのハリスを50号としてしまったからだ。ここ数年、勝浦沖のイシナギは10キロ級がメインでまれに30キロオーバーが上がる程度。そこで、イシナギでは細めのハリスを用意してしまった。
スタンディングファイトではなかなか50号の引っ張り強度を引き出すことは難しい。だが、相手がイシナギとなると話は別、ザラザラの歯や鋭いエラブタで簡単にハリスに傷がついてしまうゆえに太めのハリスを使うのがセオリーだ。超ド級まで想定するならばハリスは80号は欲しいところ。
後悔先に立たず。ここは腹をくくってアタリのタイミングを計って掛かり所を良くして、ヤリトリで何とかするしかない。
そして、次の流し。さっそくアタリが。違和感を感じてから竿を手に取ると見る間に穂先が抑え込まれた。右手にフォアグリップ、左手に竿尻。右手で竿を立てて、左手で竿尻を下げてテコの原理でてアワセを入れる。こうするとフッキングパワーを発揮しやすいばかりでなく、竿尻を腹に当てたファイティングポジションをすぐさまと取れることも利点だ。
スティングはヤリトリ時の曲がりの支点が手前なので非常に楽にスタンディングファイトを楽しむことが出来る。一方、バットパワーは強大。私の筋力では真の実力を引き出せるかどうかのレベルと言えるだろう。
シーボーグ800MJは、ジョグレバーの操作性を生かしたジョグポンピングをするもよし、ATDの粘りを生かして電動巻き上げを掛けたままロッド操作でリフトするもよし。こちらもスタンディングでそのポテンシャルを引き出すことが難しいほどのパワーを誇る。
やはり、今回はそれ程の大型を意識していなかったのでPEはキハダ用の8号としてしまったが、イシナギ用としては10号もしくは12号以上の方が安心であろう。
ヒットと同時に根に潜るようなモロコのような魚ではドラグを滑らせないヤリトリが求められる。フルドラグのヤリトリは非常に難易度が高く、時には危険を伴うほど。一方で、このポイントは根が緩やかでイシナギはまず根に潜るようなことは無い。すなわちドラグをある程度滑らせるヤリトリが出来ると言う事。
これは、釣り人にとっては非常に有利。体力的にも楽にスタンディングファイトを楽しむことが出来る。いわば勝浦沖のイシナギは本格的大物の入門にはもってこいと言える。釣り人の体力やスキルに応じてドラグ力を調節すれば初心者からエキスパートまで豪快なファイトが楽しめると言うことだ。
水中の魚の頭の向きをイメージして、ロッド操作で頭をこちらに向けづつける。頭がこちらに向いたと感じることが出来たのであれば、強気にリフトして勝負を掛ける。イシナギはハタ系の姿に似合わず水深の変化に強い。最後までその引きを味合わせてくれる。そして、難なくあがってきたのは30キロ近い本命イシナギ。
この日は釣れる予感がしたのでウエアはジャケット:DR-41020Jパンツ:DRー41020Pとした。ひとえに、この膝持ち写真を撮るためだ。巨体に加えヌルヌルが多いイシナギをゴアテックスのウエアで膝持ちするのは躊躇ってしまうもの。いっぽうでビニール系のいわゆる『カッパ』と同様の防汚性をもつDR-41020コンビなら簡単に海水でヌルヌルを落とすことが出来る。その上、この季節において『カッパ』の泣き所であった蒸れを抑える透湿性を兼ね備える。軽く、ストレッチ性もあるため着心地も良いことが嬉しい。
さらに船を流し替えるたびにアタリが出る夢の展開に。
15キロ級の小型?
さらに25キロ弱。立て続けのヤリトリに食わえて、船上に上げると脱力してデローンとなるイシナギを膝持ちすることはかなりの重労働。顔が疲れてます。
イシナギは水圧の変化に強く釣り上げても元気な場合が多い。その巨体ゆえに持ち帰って食べることを躊躇ってしまう釣り人もいることだろう。そんな場合は積極的にリリースしたい。
生きたスルメを切らしてしまったので、あとはスーバーで買ってきた死んだスルメで勝負。デッドベイトと言うことで、底を少し切ってから電動のデッドスロー巻き上げを入れて誘いとした。意外にも、すぐさまアタリが有ってヒットしたもののハリ掛かりが甘く途中ですっぽ抜け。引きからしてこちらも25キロは下らない様子であった。。。
そして最後の流しとなった。すでに3匹の本命を釣り上げて満足したこともあり、半ばヤケクソで親バリと孫バリに一匹づつの死んだスルメを付けて投入してみた。いたずらっ子のように笑う私に、船長さんが「2匹食ったらどうするの?」と冗談で返す。
今回も同様に電動のデッドスローで巻き上げを入れて誘いとする。すると、違和感を感じたと思った直後、スティングの穂先がガッツリを抑え込まれた。すかさず、竿を手に取って少し送り込んでから、大きくアワセを入れる。
今回はひたすら重い。最初はわずかに首を振る気配を見せたものの不気味なほど静かにラインが引き出されていく。まるで潜水艦でも釣っているようだ。
ラインが斜めになると船長さんが船で追いかけてラインを立ててくれる。魚は海底をトレースするように走っているようだ。全くヒットした水深から上に上がる気配を見せない。この攻防が10分も続いたであろうか。
このままではらちが明かない。ラインを手で押さえプレッシャーを掛ける。すると幾分だが走りが止まり始めた。ここで、いざ勝負とラインを押さえて渾身のリフトに掛かる。するとわずかにこちらに頭を向ける気配が。そしてようやくジリジリと底から離れ始めた。3匹+αのヤリトリの後にこのファイトはさすがにキツい。ここで私の腰が悲鳴を上げ始めた。明後日に遠征を控えており、大事を取ってこの後はホルダーに掛けてウインチスタイルでの巻き上げ。
ウィンチスタイルであればロッドでのリフトが出来ない分、ドラグをさらに締め上げてメガツインをパワーモードにして巻き上げることが常道。シーボーグ800MJのパワーをもってすればウインチの方がスタンディングファイトとよりも早く上がって来る可能性は高い。
しかし、これはハリスが太く余裕がある時の話。今回はハリスの細さに一抹の不安を感じていたので、ドラグを締めあげることはせず、PEを直接手で手繰ってサポート。このスタイルならば竿の曲がりと手の感覚の両方でハリスをいたわったヤリトリが可能となる。この間、電動はやや早い速度で巻いたまま。
そして、のこり5メートル。ボッコンと大量のエアが上がってから姿を見せたのは牛のような本命イシナギ。
計測の結果、驚きの94キロ。フォークリフトを使っての陸揚げとなった。ハリス50号とあって船長さんも驚いていた。
大人の頭がすっぽりと入る巨大な口。
私が小学生の時、将来の夢はと聞かれて「自分より大きな魚を釣る!」と答えた覚えがる。サメ以外の魚でやっとその時の夢が叶った思い出に残る釣行となった。