アングラー:福田 豊起


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福田 豊起さんの記事
2023.9.18

知床半島を望んでのサケ釣り

9月13日14日と北海道ウトロ港出船の知床のサケ釣りに行って来ました。関東に住んでいるとサケは頻繁に口にはするものの釣りの内容はちょっと想像もつかないもの。今回の釣行で関東だけでなく全国から遠征釣行する価値のある釣りであることが実感できた。そこでブログにて詳細をご紹介したいと考えた次第だ。

今回の釣行をナビゲートして頂いたMさんから釣りのイメージを事前に伺っていた。オモリは250号。仕掛けは胴突き仕掛け3本バリ。ゼロテン(オモリを底に着け糸を張った状態)で小さなアタリを取って即掛けするのがMさんのスタイルとの事。

それならば勝手知ったるアカムツ釣りのゼロテン釣法が応用できるはず。さらに極鋭中深場H205SF(以下SF)シーボーグ400J(私は左巻きなので400JL)の組み合わせがベストマッチするであろうと妄想を大いに膨らませて、釣行の日を心待ちにしていた。

ウトロ港の第8平成丸さんに乗り込み、初日はゆっくりと6時半から出船。船は知床半島に沿って北上しつつポイントに向かう。途中の絶景も今回の釣行の目的の一つだ。

ポイントは水深110m+。船は釣り人が片舷に並んで釣り座を構えるのが北海道流との事。結構潮の流れがあり、船長さんは潮に船を乗せる感じで流してくれるので釣っているとラインがまっすぐ払い出していく感じであった。

単純な胴突き3本バリとは言えかなり独特な仕掛けだ。職業柄、いろんな仕掛けを見て来たつもりだがこれはまったくの初見。写真では見にくいがタコベイトがハリにかぶさっている状態。その上の発泡スチロールの棒に派手なカラーのルミシートが巻かれている分部が目につく。関東ではまず見ることが無いので現地の釣具屋さん(ご当地ではホームセンターさんでも)か乗船する船長さんに相談するのが良さそうだ。

エサもフィッシュイーターのサケのイメージからはちょっと想像しにくいほど小さい。上方はサンマのブツ切、下がカツオの切り身。また、切り身などは普段の深場釣りの経験から皮から身を削いでヒラヒラと動きを良くしたくなるものだが、厚く身を残したパルキーな状態の方が食いが良かったことも意外であった。

早速、ゼロテンで様子を見ていく。底は極たまに根掛かりする程度なのでゼロテンはキープしやすい。潮の速い時間帯はではラインがまっすぐ払い出していることを確認してラインをを送りこんでゼロテンをキープした。潮の流れは速めとのことだったが、2日間の釣行でラインを送り出さなくてはならない時間はわずかだった。

ゼロテンをキープしやすく、かつアタリが取りやすいようあつらえたSFの穂先ゆえ至って快適。見た目にそぐわないサケの小さなアタリに集中する。

小さいものの明確なアタリにアワセると重々しい手応えの後、フッとオモリが軽くなった。すかさずジョグをいれて巻き上げに掛かる。この食い上げもサケの特徴の一つだそうだ。テンションを失わないようジョグを全開。テンションが掛かってからはPL(パワーレバー)23程度で巻き上げる。

アワセてからすかさず巻きを入れる場面がおおいゆえシーボーグ400Jのセンターのパワーレバーが非常に使いやすい。食い上げたと思えば一転して強烈な引きを見せてくれるサケなので巻き上げ途中のテンションも大きく変わる。ゆえにその都度巻き上げスピードを調節する必要が出てくる。リールをパーミングしている状態で一連のスピード調整が感覚的に思いのままに親指一本できるジョグパワーレバーはこの釣りでは一際輝きを増してくれた。

本来、アカムツやキンメなど口の弱い魚の口切れを防ぐべく巻き上げ時のクッション性も配慮したSFの美しい曲がりはこの釣りにも最適。ハリ掛かりが不安定で口周りも弱く、かつ食い上げもするサケではバラシも多いゆえにこの曲がりはありがたい。

一本目はメス。その後にさらに強い引きを見せてくれたのはオス。イクラの取れるメスを珍重する人も多いようだが、私はオスの引きの強さとカッコよさに魅了されてしまった。

この2日間はオスの率が高く嬉しい限り。100mオーバーの水深から巻き上げても大型のオスは隙あらば水面をジャンプする。サケマスの仲間は運動神経の良い魚と言う事を改めて感じた次第だ。

慣れて来たところでアワセのタイミングを調整してみる。ゼロテンで小さなアタリが出たところでジワッとわずかにアタリを聞いてみる。すると重さをともなったシグナルが現れる。これがサケのアタリ。他のゲストではアタリに重さを感じないことでアタリを判別することが出来た。

モタレ感の表現の得意なSⅯT(スーパーメタルトップ)の特性を生かしたアレンジと言えるだろう。即アワセと聞きアワセを釣りながら調整することでフッキング率高めバラシを減らすことが出来るかもしれない。

ただし、私の大好きなSⅯTだがその素材であるチタン合金の特性上、北海道の厳冬期の極低温では使えないことは注意したい。この時期限定のサケ釣りでは全く問題ないが冬場の他の釣りに使う場合は留意されたい。

今回ナビゲーターのⅯさんに教えて頂いたサケのゼロテン釣法。周りを見ても同様の釣り方をしている人はいなかったが、テクニカルで中身の濃い釣り方で非常に楽しかった。釣果的にも2日とも楽々と5匹のライセンスリミット達成と申し分ない。

私なりに2日間で感じたこの釣りの要点として、エサを安定させることが挙げられる。そのためのハリの上に付けるフロートしかりパルキーなエサしかりいずれもエサを安定させる工夫なのかもしれない。そこで、エサを安定させるべくさらに一歩踏み込んだのがこのゼロテン釣法と言えるだろう。

さらにエサを咥えたサケはその場をほとんど動かないと言う事。試しに置き竿で穂先の様子(置き竿ゆえ理想的なゼロテン状態は保てない)を見ていると中途半端なモワモワが穂先に出続けているのでロッドを手に取って聞いてみるとモタレのアタリが出てヒットに持ち込んだ場面が2回あった。

フワフワ小さく誘っている人が多く見られたが小さく誘いを入れることでその場でとどまってエサを咥えているサケにテンションを与えて向こうから動き出す大きなアタリを出す狙いがあるのでは?とも想像した。

オモリ負荷を軽減するゼロテン釣法ならその場でエサを咥えたサケのファーストインパクトを感じることも不可能ではないはず。ファーストインパクトでアワセを入れられれば、動き出すまでフワフワ待つ釣り方よりも格段にフッキングに持ち込める場面は増えるであろう。小さなアタリを取って積極的に掛けていくスタイルは面白さにも直結する。

繊細さと大胆さを合せもつこのサケ釣り。実際に経験して見ないと想像もつかない世界だ。この2日間でこの釣りの一端を垣間見た程度であろうが北海道の方たちのサケに対する強い思い入れを感じると同時に関東をはじめ遠征するに大いに値する驚きに満ちた釣りであることが実感できた。改めてⅯさんにお礼を申し上げたい。