アングラー:林 良一


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林 良一さんの記事
2015.1.13

新たな道具

「最新の竿に替えたんだけど、どうも手が合わないなぁ・・・。元の竿に戻そうかな・・・」と、新たな道具、特に竿に関しては、誰しもがこういった迷いを抱いたことがあるのではないでしょうか。

またこのようなことも・・・

度々テレビ放映のある、マグロの一本釣りで名を馳せる青森県の大間。
魚群の先に回り込んだ途端、瞬時にエサを投げ込み勝負、時として100kg余りの、200kgにも迫るマグロが上がる、日本屈指のマグロの水揚港でもあります。

そんなマグロ漁師達にも新たな道具が船に搭載され、その一つには、魚探よりも広いエリア、船の360°の海中を見渡せるソナーの導入があります。

以前はマグロに突き上げられ、水面近くを逃げ惑うベイト(イカ、イワシ他)を空中から鳥が狙い、その鳥の動向を見て漁師はマグロの群れの進行方向を推測、マグロの群れの先頭に我さきに船を回り込ませていたようですが、新しい船をもつ漁師はソナーを使い、たとえ海面の変化や鳥の動きが無くとも、海中のマグロの群れを画面に捉えながら操船し漁の効率を上げているようです。

漁獲がなければ漁は成り立たないわけで、そんな中、我が船にソナー搭載を決意する老獪な漁師もいれば、水揚げが良くない漁師は借金をしてまでも新たな道具を手に入れたりもするようです。

 

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ですが・・・

孤軍奮闘する船上で、ソナーを見ながらの操船はかなりの慣れが必要らしく、いざマグロがヒットした時、巻き上げ機の誤操作で、1本上れば少なくとも数十万円になるマグロをバラシてしまう・・・
「ソナーを積んだけどを使いきれない」と、ソナーの電源を切り船団を離れてしまい、以前の自分に戻り鳥を見て・・・、と、冒頭の話しではないですが、「元に戻してしまう」漁師もいるようです。

釣りでは・・・

慣れ親しんだ、言わば自分の右腕となっている竿は、その感度、特性、調子などが体に刷り込まれていて、たとえ目をつむっていても、海中の仕掛けの動きなどのイメージが苦も無くできるものです。
そして、それが迷いが生じないことに繋がり、釣果にも繋がって行く大切な部分であると実感しています。

老獪なマグロ漁師は、ソナーを切って五感を研ぎ澄ますこともあるようですが、釣り師は新たな道具を手にしたときにこそ五感を研ぎ澄まし、新たな道具と今までの道具の差異を冷静に判断、過去の自分を信じ、いつもそうして釣ってきたように、その道具の欠点さえも熟知し惚れこみ使い込むことで、その道具の可能性や、新たな釣りが見えてきたりするものです。

また、漁師は水揚げ高が給料に直結する要素となりますが、釣り師は意図しようにも思うように釣れなかった時、その悔しさが面白さに転化する術を知っており、「カワハギ地獄」という言葉からもそれを鑑みることができます。

 

釣り師が己の右腕をすげ替える時、高揚してしまう新たな期待感とは裏腹に、五感を研ぎ澄まし、更に進化した右腕にすることを志し、楽しみたいものです。

 

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もうすぐフィシングショーです。今年はどんな新たな道具が待っているのでしょうか。