アングラー:林 良一


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林 良一さんの記事
2014.12.10

〈林〉手段と目的

釣り教室を始めて3年が経ち、後日ご参加いただいた方からいただくステップアップしたという連絡は、「教室を続けて来て良かった」という思いと共に、「その方の釣り人生に少しは貢献できたのでは」という思いが重なり、今後の自分の釣りのモチベーションの維持にも大いに役立っています。

釣り教室では、皆さん思い思いのタックルをお持ちになり、もちろんビギナーから上級者の方までご参加いただいており、わざわざ書き記すこともないのですが、お一人お一人個性をお持ちになった人であるのです。

自ら船中を回りながらの釣り教室のこと、「今日はこのパターンで食いますよ。釣れますよ」と、対象魚を釣ることができる手段は、皆さんの釣りを見させていただいている分、その時のパターンが比較的早くに分かることにより、そんなに難しいことではないのです。

ただ、その時の食いパターンを次回の釣行で試してみても、ことカワハギ釣りの場合などでは、状況の変化その他で、高い確率で別パターンの釣り方が有効となることが多く、前回のパターンは引き出しに仕舞い込み、今まさに船下にいる好敵手の気持を思い量りながら、過去蓄積した別の引き出しを開け、当て嵌めていくわけです。

また、自分が大釣りしたとき、例えば「今日はゼロテンションが良かったよ」などと、気が置けない釣友に話したりするものです。しかし、では、「何故ゼロテンションで釣ることができるのか」という、その釣法に至ったいわば理論は、話す方もそれを受け取る側も経験豊富であれば瞬時に状況判断ができるかも知れませんが、先に書いたよう、大抵同じパターンで食うことのないカワハギのこと、「その時の状況も踏まえ分析」しなければ、次に繋がるとは言い難いと思うのです。

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釣り教室では、「こうすれば釣れる」という手段をもう一歩も二歩も踏み込んで、「こういった状況なので、今カワハギの気持はこうであると考えられます。ですからこの釣り方が有効なのです」と、誤解を恐れずに書かせて頂ければ、皆さんの技量に合わせてお伝えしています。
例えば「さっきまで釣れていたのに、今はエサが残ってきましたね。これからは誘った後、仕掛けを止める時間を長くしてみて下さい」とお伝えしてみます。そうするとエサが取られ出し、船中のどなたかがカワハギを釣り上げ、別の方もまた釣り上げ、なんていう展開になるものです。
これで、「カワハギを釣る」という、その時の手段は達成なのですが、「そうすると何故釣れるのか、そうする目的は何か」に僕は重きを置くようにしています。

その時の状況、例えば潮が緩くなってきたとすれば、押しなべて活性が下がり=エサを摂らなくなっていく という一つのセオリーがあり、潮が効かない=いざカワハギが食いに来ても、エサを食べながら流されたりし難い=アタリが出難い という伏線があります。
ご参加の皆さんにはその内容をイメージして把握していただき、「そういった状況が考えられますから、誘った後はしばらく止めの時間を作って、活性の低くなったカワハギにエサをジックリ見せて、食いに来てもアタリが出難いので、海底で横になっているオモリが立つ位、居食いしているカワハギと仕掛けをずらしてあげてアタリを出してみて下さい」と、何故そうするのかという理由をお伝えしています。

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釣り教室を開催していることの一つの目的は、釣ることのできる手段をご自分で判断して構築していただくことで、これは、釣りに対しての心構えを養っていただくことでもあるのです。
「船に乗り船長がポイントまで釣れて行ってくれるのだから、釣らせてくれて当たり前」という考え方ももちろん正解なのですが、乗合船でも帰港中には、「トップでどれくらい釣ったの? どこの釣り座の人?」など、自分の釣果との比較対象が気になるものです。

 

釣り教室にご参加いただいた方から、「釣りに対する考え方が変わりました。そして、新たな1匹を釣ることができました。りょうさんのお蔭です。ありがとうございました」という、実に嬉しいご連絡をいただくこともあります。ただ、それは僕のお蔭ではなく、釣ったのはご自分本人なのですから、ご自分の手柄なのです。僕は皆さんに、釣りでの応援をしているだけなのですから。

14日(日)は、今年最後のカワハギ釣り教室を池田丸さんで開催いたします。これからも(「釣れた」ではなく)「釣ったよ~!」という皆さんの笑顔をエネルギーにして、釣り教室を続けて行きたいと思っています。

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