アングラー:林 良一


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林 良一さんの記事
2013.2.15

〈林〉凪は良いか?

海上が穏やかで風が止んでいことを凪と言いますが、釣り師にとっては好条件とされ、海に浮かび揺れる船上でのこと、揺れが少ないほどアタリが取りやすく意とした竿の操作ができるものです。凪であれば「底荒れ」と言われる、海底の砂やゴミなどが舞い上がってしまう影響も少ないと思われ、海の底付近を棲家にしている魚達にも悪い影響は無いと考えられます。もっと様々な状況があるとは思いますが、こんなことを魚目線で考えてみるとどうでしょうか・・・

凪でほとんど平水面、比較的浅い(10m位の)水深、澄んだ潮色、天候は晴れの条件だったとします。海中ではきっと、ポイントに近づく船のエンジンの響きの後、船体を震わすリバース・ギアの音、同時に船の影が魚達の頭上に来るわけですが、音や影などを気にしない魚もいると思うものの、警戒する魚達もいるはずだと考えられます。かつて夏タチウオに傾注していた頃、水面下5m位が食いダナの夏期、タチウオの群れに船を近づけようとスラスターをかけると、魚探に映るタチウオの群れはすぐに沈下し始め、釣りを始めても口を使ってこない経験が何度もあります。近くに船が来て、やや強めのリバース・ギアでタチウオの群れの上で勢いよく船を止めようとするときも同様で、一気に群れは沈下、活性も下がり警戒しているかのようでした。

「凪倒れ」という、釣り師にとっては一種有難くない言葉を耳にしたこともあると思いますが、凪の日は、船に乗って近づくこちらの動向も魚達には分かりやすい部分もあるかも知れません。それに対して多少波っけがあり曇天、やや濁りの入った潮、比較的深い水深の場合だと、先の船の音や影などもかなり緩和されることが想像でき、こちらの気配を悟られないように仕掛けをプレゼンテーションできるのではないでしょうか。コマセマダイのハリスの長さなんかからもその辺りが読み取れます。ちなみに深海と呼ばれるエリアは、海中でもっとも安定している場所でもあるそうです。

釣りの先人の「今日は荒れているが、行ってみないと分からない。他の船が出ないとすれば、それだけそのエリアのプレッシャーも少ないわけだから、場合によっては良い釣果になるかも知れない」との記述を読んだことがあります。もっともこの場合は凪の日よりも危険を伴うわけで、一概に「ああそうか、では!」という事柄ではないとは思うのですが・・・

 

狙う魚種にもよると思うのですが、その魚の習性を考え、「少々釣り師にとっては不利な条件であっても、魚目線ではどうなのだろうか?」という考え方も釣りでは必要で、そこのところのバランスを図りながら釣り進めて行くことも大切ではないでしょうか。

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