アングラー:林 良一


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林 良一さんの記事
2011.5.18

〈林〉釣りによくあること

釣り好きの友人に誘われ「たまには船釣りもいいか!」と、初めて船釣りに行った時のこと。

いざ船に乗り込み、友人から道具の使い方、釣り方などを一から十まで教えてもらい、いざポイントでは、「これでいいのかな」と、皆さんからかなり遅れて仕掛けを下す・・・。

よくある船上の風景ではないでしょうか。

 

そして・・・

最初の獲物はその初心者さんが会心の笑顔で釣り上げ、釣りの手ほどきをした友人は、「まあこんなもの、ビギナーズラックという言葉もあるじゃないか、まだ一日は始まったばかり・・・、そのうち・・・」と、内心自分を落ち着かせながら余裕のポーカーフェイスで釣り進めます。

ところが・・・

釣りが終わってみれば僅差でビギナーの勝利・・・

もちろん釣りは釣果だけではないのですが、そのビギナーの友人が「今日はありがとう!お陰で沢山釣れたよ!!」と言い終わるより早く目をそらしてしまい苦笑い・・、釣りの先輩としてちょっぴりハズカシイ時でもあります。

 

それからビギナーであったその方は、日々釣り雑誌等で勉強、釣具屋に足繁く通い、釣りの知識が蓄積されて行くと共に釣り道具も増えていき、夜な夜な一杯やりながらなおも釣り雑誌を読みふけり、新品の釣り具を並べて目を細め・・・、そうです、皆さんと同じくイッパシの釣り師の出来上がりです!

ですが・・・

ここからが「釣りによくあること」、そう、思うように釣れなくなっていくのです・・・。

 

ビギナー=無心 なので良く釣れるという一説もあるのですが、確かに釣りに一筋ならぬ興味が出てきて、その門をくぐったときは胸ときめくものですが、その時は眼前に長く続く道には気付かないものです。

大人がバケツ一杯釣れてしまうザリガニ釣りに傾注しないのがよい例で、その魚を釣り上げるのが難しいほど、テクニックを要するほど奥は深く、すなわち道が長いと言えるのではないかと思います。

その道の長さを釣りの喜びに転化できればしめたもので、例えば読み終えた釣り雑誌を読み返してみると、以前は漠然と読み進めていた文の中の深い内容が、閃きを伴いながら手に取るように分かった瞬間、自分の中で、一匹を釣った喜びとはまた違った喜びを見出せたことになり、もっと釣りを深く見てみようという思惑が、力強く湧き上がってくると思います。

今日の釣りを思い出しながらの帰途の途中、「次は仕掛けをこう工夫して、そして誘いは・・・」など、いつの間にか次回の釣行を思い待ちわびる・・・

求道者とは言わないまでも、自分の釣りのクオリティーを上げるために、船上で立ちはだかる壁を打破し、今まさに海面を割って上がってきた好敵手には思わず小躍りしてしまいそうになる・・・、これも「釣りによくあること」ではないでしょうか。