〈林〉江戸前のモンスター・マゴチ 月刊つり人さん取材
今回のマゴチ取材の船宿は浦安の吉久さん。宿の前には、吉久さんが掲げる釣り物の看板が賑やかに立て掛けられています。思えばマゴチ釣りは10数年振りで、当時はテバネ竿に道糸はナイロンラージ、メゴチエサで釣ったり、ジグヘッドとソフトルアーで釣っていたのでした。ですので、そのブランクを埋める為、取材当日は実はプラクティス日として、プライベートでのマゴチ釣りの予定だったのですが、諸事情により急遽取材と相成りました。ここ数年釣れ続けている江戸前のモンスター、マゴチ。以前は「照りゴチ」などと呼ばれ、文字通り夏の釣り物でしたが、今では周年近くマゴチ船を出す船宿さんもあり、その人気の高さを窺わせます。そんな状況を見て、10数年振りにマゴチ釣りに行ってみようと思い立っていたところに、「つり人」さんから東京湾内の船釣りの取材の相談をいただき、「まだタチウオには時期尚早ですし、好調が続くマゴチはいかがでしょうか」との提案が即決、翌日仕掛けなどを買い揃え、その翌日、5月22日(木)船上の人となりました。
吉久さんは釣り物が多彩、それゆえ船数も多く、旧江戸川に係留してある各船には、釣りものごとに立札が立っていて迷うことがありません。
さて仕掛けです。以前は鋳込テンビン、三日月オモリを使っていたマゴチ釣りですが、吉久さんの峰岸船長のおすすめはバランスシンカーです。これにフロロ4号のハリスを一尋(1.5m)、ハリはマゴチバリやヒネリを取ったスズキバリの17号前後、 チモトには、これも船長工夫の編み付けを施し、掛かると頭を振りながら抵抗するマゴチのこと、ハリスの抜け防止のヒラウチ部分にハリスが擦れることによって起こるハリス切れを防ぎます。ちなみに、チモト直上を2重のハリスとする方法もありますが、やや食いが落ちる感があるそうです。
ロッドはリーディング73 MH-200、これは、トップの次、2番目から4番目のガイドがAGSで、AGSが生み出す振り抜きの軽さが際立ち、細身な竿だけにより軽快な印象を受けます。リールは質実剛健なミリオネア、ラインは、マゴチの硬い上顎にハリを貫通させる為、強いアワセにも心配のない強度のハイパーメガセンサー2号を巻いてみました。
参考にと持ち込んだテバネ竿を撮影中、つり人社の佐藤記者。
船は舫いを解いて定刻7時に出船。当日は中乗りとして、吉久若手のホープ橋本くんも乗船していて、ポイントに着くまで舵を握っていただき、その間峰岸船長から、エサであるサイマキ(小型のクルマエビ)のハリへの装餌の仕方、釣り方などのレクチャーをお願いいたしました。概ねエビエサの場合「エビの脳みそにハリを当てるとエビが死んでしまうので、脳みその手前にハリを通し、脳みそを避けることが大切」などの解説がありますが、峰岸船長流は「ハリは浅くではなく、なるべくハリ先がエビの殻の中心に近づくように刺すことが大切で、ハリ先が殻の先端(目の付近)にあるよりも、中央付近に少しでも寄っている方が、より深いフッキングができるのでは」とのことでした。でも・・・、脳みそを刺しちゃいますよねぇ・・・、でも大丈夫! そこにはサイマキが死なない工夫がありました!!
ポイントは大貫沖、この辺りは湾フグ釣りでも一級ポイントであり、僕にとっては通いなれたフィールドです。水深は10m前後、前日1日降り続いた雨のせいか潮は濁っています。丁寧に刺したサイマキとオモリを海面に、オモリが着底したら1mタナを切ってアタリを待ちます。
一流し目は空振り、10分後に流し替え、タナ取りをすると、ひときは大きくサイマキが跳ねる「ピンッ」という挙動が竿先を揺らし手感度に伝わります。直後、トップガイドを3~5cm、断続的に数回動かすマゴチからのアタリが! そのときテンションを抜くくらい、10cm位送り込み、サイマキのどの部分を咥えているか分からない=その段階ではハリ掛かりに至りにくい マゴチに、「エビを口の中深くに飲み込む隙」を与えます。きっとこの時、一瞬口を開き、口の奥方向に向いた細かな歯でサイマキを咥え直し、そんな食べ方を数回繰り返しながら出るアタリには、「10引かれたら、5戻すような」テンションをかけながらとは峰岸船長、その後にくる、大きな引き込みで下を向いてい
る竿を持ち上げ、マゴチの重みを感じながら、水平より上へとビシッと振り上げ、マゴチの硬い口にハリを貫通させます。
この「アワセ」までのプロセスの面白さと、直後に訪れる、その大きな頭を振りながらの「暴力的な引き」がマゴチ釣りの真骨頂、江戸前のモンスターの所以です!
幸運にも55cm近いマゴチを早々に釣り上げることができ、取材用の写真が早めに撮れ一安心です。その後同サイズを釣り、3匹目は61.5cmの大型マゴチと出会うことができました。使用していたリーディング73は、15号オモリを背負いながら、海底付近で跳ねるサイマキの挙動であったり、マゴチのアタリの初動、食い込ませる為の柔軟な穂持ち、シッカリとアワセを効かせられるバット部と、どれを取っても申し分なく、10数年のブランクの手助けをしてくれました。
佐藤記者も概ね取材が成立、リーディング スリル・ゲーム 73 MH-195 にミリオネアICVのタックルで、あれよと言う間に3本のマゴチをGET! いや~流石でした。脱帽。
ただ当日は、アタリがある割には押しなべて食い込みが悪く、サイマキの殻のから出る足だけを嚙み千切っていったり、アタリの初動でサイマキを放してしまったり、サイマキがこんな姿になっちゃったり・・・(イカ?それともフグの仕業?)
最後は第2海堡の北側のポイントに移動しました。セオリー通りにタナ取りしアタリを待っていると、初動の後大きな引き込み! ガッチリとアワセると、固めのドラグがスルルル~と出て行きます。タモに入ったのは70cm近い立派なスズキでした。嬉しい外道に思わず頬が緩みます。
さて、今回マゴチは61.5cmを頭に5本釣ることができました。急遽な取材、ぶっつっけ本番といった様相でしたが、頼りにしている船長、信頼あるタックルに助けられた感がありました。釣具の進化は目覚ましく、10数年前のマゴチ釣りとは、ターゲットは変わらないものの、新たな発見があり、次のマゴチ釣行に繋がる、いくつかの楽しい問題も見えてきました。
懐かしさよりも新鮮さが上をいく、今回のマゴチ取材でした。吉久さん、峰岸船長、橋本くん、ありがとうございました。佐藤記者お疲れ様でした、また是非抜擢いただければと思っております。
今回の内容は、「月刊つり人」6月25日発売号に掲載されます。よろしくお願いいたします。