〈林〉相対距離 ゼロテン・パーミング
相対の意味を調べてみると、「あるものが、ほかのものと関係して存在すること」とあります。釣りでまず、対象魚と釣り師との関係が思い浮かびます。また、船に乗って釣りをする船釣りでは、海底と釣り師との相対距離は常に変化していて、凪であればその変化は少なく、船が揺れるほど変化は大きくなっていきます。
堤防で釣りをしているとき、多少風波が立ち海面がざわついても、海底と堤防の相対距離は何ら変わらず、同じ場所に仕掛けを投入して底立ちを取れば、ラインは毎回一定の長さだけ出るわけです。船でも、アンカーを入れ定点に船を固定した場合など、堤防と同じように、安定した状態で釣りができるかと考えることができますが、実際は、ウネリによる船の上下動があり、舳から1本だけのアンカリングの場合は、艫が左右に振られることもあり、やはり相対距離は常に変化しているものです。
そこで、揺れる船上でも、オモリを着底させてからラインを一定の長さに保ち、船の上下動を打ち消すかのように竿を上下動することにより、トップガイドと海底の相対距離は変わらず、僅かに穂先だけを曲げた状態=ゼロテンションを維持できたなら、海が荒れているときほど、仕掛けコントロールが難しいほどアドバンテージがあるものです。
以前こんなことがありました。 マルイカ釣りでのことですが、舳突っ込みのその日、当然舳からマルイカが釣れ始め、数人おいて艫2番の釣り座の僕には中々アタリが来ませんでした。そして、舳側の釣友を羨むよう見やってしまう時がしばらく過ぎ、後半に差しかかった時に徐々に風が増し、体感で10m位の風になってきました。すると、オモリを切った釣り方で、より揺れの激しい舳近くでは仕掛けが暴れすぎてしまい、きっとマルイカが抱き付こうにも、動き続けていて止らない=食う間のないスッテには抱き付こうにも抱きに行けず、そんな数人のスッテを見ながら僕の仕掛けの前に来たマルイカは、ピタッと止っているスッテをすぐに抱いてくるようで、その日、最後の1時間で30杯余りのマルイカを釣ることができました。
これは何も、ゼロテンションが万能の釣り方だと謳っているのではなく、効果的なことがあるという程度なのです。
揺れる船上でゼロテンションを維持するには、リールを装着したロッドの前方、丁度重心となる部分(写真の極鋭カワハギAIR1455ではフォアグリップ(リールを絞め込むネジ部)の前)を、人差し指と中指で挟み込み、中指を支店としてロッドは支えられていて、小指はトリガーの前に持ってきます。
これを「ゼロテン・パーミング」と呼んでいますが、リール、ロッドを外すとこんな手の格好となります。
中指がタックルの重心の直下にありますので、ゼロテン・パーミングでは、ウネリなどで船が上がった場合はパーミングを緩めてやると、自然に竿先は下に引かれるように動き、反対に、船が下がった場合には、リールのハンドルが逆転しないことを利用し、パーミングしている掌とは反対の手を使って、ハンドルを逆転させる方向に優しく力を加え竿を越こします。
僕はこの方法を、マルイカはもちろんカワハギ、湾フグ、アナゴ、イイダコなどでも用い、オモリを切るスミイカのエギングなどでも使っています。
船は、プロである船長が好敵手の真上まで連れて行ってくれることを思うと、それだけで釣り人にはかなりのアドバンテージがあります。ただ、陸地と違って様々な揺れをする船上のこと、その揺れを制することは、船釣りのスキルのなかでは見過ごすことのできない要素だと思っています。
【RYO’S METHOD ステッカー】
明後日3月20日(木)、上州屋渋谷店さんでの宮澤さんのマルイカミーティングの際と、横浜フィシング・ショー、DAIWA船ブースにてのカワハギ最前線トークショー(3月21日 11:00~11:40、22日 14:00~14:40 )の際、僕のゼロテン・パーミングをモチーフにしたオリジナル・ステッカーをジャンケン大会に出品させていただきます!