〈林〉船釣りの二大巨星
服部名人と大塚プロは、船釣りをされる方には周知の通り、釣りを趣味とされていれば少なからずご存知かと思われます。お二方とも、どの釣り人もが認める船釣り界の二大巨星でした。
子供の頃、深夜番組に出演されていた服部名人。眠い目をこすりながら、トローリングで掛けたカジキが乱舞するテレビ画面を食い入るように見入っていたものでした。そして小学生高学年の頃だったでしょうか、「日本の釣り百科」という、当時持っていた国語辞書の倍位の厚みがある、服部名人と松田氏共著の本をお小遣いを貯めて買った思い出があり、一つの対象魚でも、地域によって様々な釣り方があること、対象魚それぞれに、丁寧に書かれた、釣り方や仕掛けのイラストを舐めるように眺め、何度も読んでいたことが思い出されます。
中でも興味深かった一つは、自作の手バネ竿で釣る夜アナゴ釣りで、その作成法からの解説、イラストがあり、この頃からアナゴ釣りに興味を持っていたのでしょう、本格的に船釣りを始めた頃、小型リールとPEラインでのアナゴ釣りに随分傾注したものでした。
またこの頃、お小遣いで浮き、ハリなど、個々に買い足していってタナゴ釣り釣りにも凝っていました。著書には、タナゴバリの砥ぎ方、エサである玉虫(イラ蛾の幼虫)のハリへの付け方も事細かく書かれていて、毎晩読みふけり、次の釣行へと思いを馳せていたものでした。
でも、実は「日本の釣り百科」(確か初版だった)は、中学時代の引っ越しで紛失してしまい、数年前に古本として再度購入し、今も子供の頃と全く同じ気持ちで時折読み返しております。
また、「服部博物館」には、竿やリールの他、古から現代までの、全ての服部コレクションの他、服部名人の釣り部屋なども公開されていて、こちらも座右の書となっています。
一方大塚プロも、船釣りのターゲットをほとんど網羅してしまうほどの釣り魚種の多様さはもちろんのこと、テレビ画面狭しと繰り出されるパホーマンス、そして、釣りが本当に楽しくなってしまう解説の数々は記憶に新しいところかと思います。個人的にも大塚プロとは、以前にアナゴ、タチウオなどで偶然乗り合わせ、ポイントまでの航行中にお話しさせていただいたり、隣の釣座で釣らせていただいたりと、思い出深いことが多々ありました。
そんな大塚プロの「大塚貴汪の激釣テクニック」は、新たな魚種に向き合う時、また、シーズン初めに紐解く大切な書となっており、その体験から導き出された「撃釣理論」には、思わず首を縦に振りながら読み入ってしまいます。
この本には、対象魚の基本的な釣り方はもとより、まだ試行錯誤中の内容には「まだ結果が出てはいないが」などの前置きがあっての説明など、大塚プロ自らの、正直な経験も各所に散りばめられており 、大塚プロの釣りに向き合う真摯な気持ちが垣間見られます。
船釣りの二大巨星が現在の船釣りの、大きな大きな礎を築き上げたことはわざわざここに記すまでもありませんが、もちろんご紹介した他にも著書は沢山あり、次の釣行に想いを馳せながら、夜な夜な一杯呑りながら、また、風の日に釣りに行けない釣り師の為のバイブルとなっているのではないでしょうか。