アングラー:林 良一


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2012.6.28

〈林〉アタリの寸法

例えばマルイカ釣りで・・・

水深30mにあるスッテを水平方向に10cmマルイカが動かしたとします。

その時、垂直方向にPEラインはどの位移動する=アタリとして表れるのでしょうか!?

PEラインの伸び、水その他の抵抗は無いものとし、オモリは定点で固定されているとすると・・・

10cmは0.1mなので 0.1mの自乗+30mの自乗=900.01㎡ この平方根は 30.00016666・・m となり、そこから30mを引くと、約0.2mmだけ垂直方向に移動すると計算上は答えが出るわけです。

ただ、約0.2mmでは、どんなにゼロテンションを駆使しようとも、実際の釣りで目感度でアタリを取ることは不可能であることが想像できます。

ではなぜもっと大きな数ミリのアタリとなって竿先に表れるのでしょうか?

 

水平方向に仕掛けを動かすアタリでは、先ほどの計算の条件である「PEラインの伸び」は、実際伸び率が高い程アタリを殺してしまうことになり、これは、ナイロンラインを想像していただければ理解しやすいと思います。そして「オモリの定点固定」は、実際水中に吊るされている、あるいは海底にあるオモリはアタリと共に多かれ少なかれ動いてしまうわけで、アタリの挙動でオモリが垂直方向に動いて(上がって)しまえば、やはり穂先に出るアタリをスポイルしてしまう要因になると考えられます。

竿先に出るアタリを大きく助長する要素には、「水の抵抗」と「時間」があると考えられ、水切れが良い細いPEラインを使っていたとしても、水の抵抗はゼロにはならず、水中で「j」の字のように、仕掛けの下部が水平方向に引っ張られると、水の抵抗によって仕掛けの直上にあたかも、口径の大きなスプールがあるかのように緩やかなRのまま仕掛けのラインが引っ張られ、それより上のPEラインは横振れすることがほとんど無く、垂直方向のアタリを伝えると思われ、それに加味して、マルイカがスッテにぶつかってくるような=スッテの移動時間が早いアタリほど、穂先を動かす挙動が大きくなることも想像できます。

 

「PEラインが横に振れるようなアタリ」などと表現することがありますが、タックルを熟知し、ご自分のスタイルを知り尽くしているゆえの言い表し方で、個人個人の感覚でその微細なアタリの表現方法は様々、「ここでアタリを出す!」という時、その一瞬感覚を研ぎ澄まし、今まさに竿を握り息を詰め穂先を凝視し、自分だけの「アタリの寸法」を見極めるのです。