アングラー:林 良一


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林 良一さんの記事
2013.5.30

〈林〉基本を支えるもの

十数年前、釣り船に乗り始めた頃、当時ブラックバス釣りをしていた僕はバスロッドを2本持って夜アナゴ船に乗ったのでした。ベイトリールのラインをナイロンからPEに巻き替え、そのタックルでシーバスやタチウオをジギングで狙っていたのもこの頃からでした。

その後少しずつ専用タックルを買い揃えて行くのですが、アナゴ釣りでは両手でゼロテンション→オモリを切り・聞くを左右の手で繰り返し、ジギングでは数十メートルの水深で、ショートピッチでテンポよくジグを操作することに喜びを覚えたものでした。そうして時が経つうちに、「揺れる船の上でも、あたかも動かぬ堤防で釣りをしているかのような仕掛けの状態の精度を上げること」を意識し出しました。

たとえばアナゴ釣りでは、僕は座った姿勢で小突きを繰り返すのですが、視線は目線の延長にある2本の竿先を見詰めているので、座っている尻で船の揺れの方向や強弱を感じ取り、一瞬遅れて振れてしまう手先の竿を肘の曲りを使って修正しながら一定のリズムとストロークで小突き、不意の揺れは手首で補正しながら、ある程度揺れても海底のオモリは一定の動きを繰り返すようイメージします。タチウオのジギングでは、やはり揺れる船上で、ショートピッチ・ジャークという、海中のジグを動かす・止めるのリズム、ストロークを規則正しく与えてやり、鉛の塊であるジグに命を吹き込み、一定のリズムで一瞬止まるジグを目掛けてタチウオがバイトしてくるのを誘います。

湾フグ釣りでは、その微細なアタリを可能な限り大きく出したいが為に自分で穂先を削り、ほんの小さなアタリも見逃すまいと釣り進めて行く反面、船上でその繊細で柔らかな竿先を一定に止めておくのはかなりのテクニックが必要となってきます。

このような「アタリを出し掛ける釣り」を中心に十数年船釣りをしてきたのですが、そういったテクニカル系と呼ばれるターゲットを相手にしていると、複数の釣ものの中では共通する部分も多く、そこからまた新たなテクニック、仕掛けなどが生まれることもありました。

 

僕にとっての基本の一つは船の揺れを制することで、きっとそれは全ての魚種に共通することだと思いますし、アタリを殺さずに伝える直線的に配した仕掛けであるとか、釣果に関わらず貪欲に次に繋がる何かを持ち帰ることなのです。単一魚種を釣り続ける場合でも、他の魚種での経験が基本を支えることもあり、そこに気付きステップアップを実感したとき、これも釣りが与えてくれる喜びの一つで、それがまた、次の基本となっていくのだと思います。

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