〈林〉引き出し
パソコンやインターネットが発達している現在、未知の釣り場、初めての釣り宿を訪ねるのにも、エリアの情報が安易に手に入りやすい環境となっています。それに今までの経験を加味してその釣行予定日を決め、幹となるタックルの組み立て、釣方を絞り込んで行くものです。
しかし、それは「情報」であり、一つの指針ではあるもののあくまでも参考ということで、一番大切なことは、船上でその日その時の状況に順応させていくことで、「このエリアのこのポイントでは、今どのように釣れば釣果が上がるか」を考えることが一番大切だと思います。
こんな経験をしたことがあります・・・
数年前、未知のエリアであった熱海での夏カワハギに行ったことがありました。その時はダイワの極鋭カワハギAIRシリーズが発売された年でもあり、それらを使ってのつり情報さんのインプレ取材での釣行でした。
船では早速「では得意な宙で!」と、同船者の皆さんが中オモリを付け釣っている中一人オモリを切り始めました。船は前突っ込み、ミヨシの僕からアタリがある筈が、艫の常連さんが時折カワハギを上げているではないですか!? その方は数珠のような中オモリを付けた仕掛けで、なんと船縁に両肘を付きながら釣っていて、それも時々竿を上下しているだけなのです・・・。「う~ん・・・。何で自分だけ釣れないのだろう?」と、焦りを抑えつつ状況を分析してみました。すると釣り始めて二時間、根らしい根は無く砂地を流しているような感じ、そこでふと閃き「根のような障害物が無い場所ではカワハギは浮きにくいのだろうか?」と思ったのでした。
「フラットな地形の底付近にいる魚が浮くということは、死角となる下方からフィッシュイーターの攻撃を受けるかも知れず、その場合逃げ場もないということで、よっぽど活性が上がらない限り宙の釣りは不利では」と考え、中オモリを付けタルマセからハワセでようやく1枚、決して水温が低いわけではないのにそんな釣り、エリアを知らないことによるデメリットを体験したことがありました。
逆に荒根の剣崎などでは根は立錐のごとく、カワハギにとっても隠れ場所が豊富で浮きやすいと考えられ、根の頂上から頂上へと移動するカワハギもいるかも知れません。そんな場所で仕掛けをハワセてしまえば、極端には遠投してしまっては、高確率で根掛ってしまい釣りどころではなく、オモリや仕掛けが幾つあっても足りないことでしょう。
こんなことを経験から次に繋がるもの=自分の引き出しの一つとして、それを幹に釣り方を組み立て、実釣ではいち早く状況を把握して分析しそこから枝葉を出し嵌って行ったとき、それがまた新たな引き出しとなって未来の自分を助けてくれるのではないでしょうか。