アングラー:林 良一


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林 良一さんの記事
2011.4.26

〈林〉船長との語らい

早朝とある船宿の待合所での風景・・・

お茶を飲みながら談笑している釣り客に向かい船長が、「昨日はいい感じだったよ。朝から一日食ってたし、今日もいいでしょう!」と笑顔で一言。

聞いていたお客さんは皆一同に鼻の穴を膨らませ、気分はもう船上の人、頭の中ではもう、足元のバケツの中に泳ぐ幾匹かの獲物の姿が見て取れているかも知れません。

いざ船に乗り込み用意万端、きっと船長は昨日良かったポイントに向かう筈・・・。

船がスローダウン、旋回してギアをリバースに入れる音と共に開始の合図、喜び勇んでの第一投、スプールを軽くサミングしながら見やう海に吸い込まれていくPEラインのマーカー・・・

すると突然「あ~、今日はダメだなぁ~。潮の色が昨日と全然違っちゃってるもん!」

と、まだオモリが着底していないのに、やおら船長からの手厳しいマイクパホーマンス(苦笑)

呆然としていると、既にリールのスプールは止っていてイトフケが・・・、慌ててリールを巻き込み底立ちを取るとアタリ!?

そのままガッチリ鈎掛かりさせ、「船長何言ってんだよ、結構いい手応え、今日も大丈夫!」とリールを巻き、上がってきたのは隣の釣り人の仕掛け・・・、なんてこともあります。

 

以前にも書きましたが、釣り師の時世に今はなく、「昨日はよかったんだよ」や、「明日になればなぁ・・」など、まさに「今」は良くないことが往々としてあるようです(笑)

でもしかし、朝の待合所での船長の一言は事実でホンモノ、今状況が変わってしまっているのは誰のせいでもないのです。

日頃から生業である釣りに熱心な船長、そんなプロである船長であっても自然の移ろいには読みきれないところがあるのも当然、逆にその状況を逆手に取って・・・

「船長が『きっと今日もいい』って言ってたからさぁ、釣れているのに仕掛けが足りなくなっちゃうと困るから、仕掛けもオモリも沢山買ってきちゃったよぉ~~」なんて、カワイイ反撃をしてみたり・・。

また、親子二代で船宿を商いとしている釣り宿も多く、年齢的には僕ら世代よりもやや年下にあたる若船長にも素晴らしい方々が多く、一生懸命釣らせようとして操船してくれることはもとより、話題の共通点も多く、釣り以外の話しでも盛り上がったりと、たとえその日があまり釣れなかった日であったとしても、帰りの車中、つい先程の船長との語らいを反芻して笑顔をかみ殺したりと、「今日も釣りに行ってよかったな」と思えることも少なくありません。

そして、新たな船宿、最近疎遠だった船宿に久し振りに行ってみたりすると、またそこにはそこでの語らいがあるもので、釣行前夜からそんなことを思いながらタックルを用意するのも一興で、「明日の船宿はこんな船長だから、そうだ、この話題を振ると笑ってくれるかな!?」など考えながらの釣行前日も悪くないものです。