〈林〉エダスの長さと潮の速さ
黒潮の蛇行の影響を受ける沿岸地域、はたまた細長い形状で、月の引力による潮の干満の影響を受ける東京湾。
どのエリアでも、潮の早い日遅い日、流れない日、上層と下層の潮の早さが違っている二枚潮、三枚潮など、「潮の速さ」はその時々によって違い、それによる仕掛けの違い、適応性等を考えてみました。
具体的には「エダス(またはハリス)の長さと潮の速さ」についてです。
マルイカ釣りでは・・・
大別すると、ハリスが無いといえる「直結」、ごく短いハリスの「直ブラ」、比較的ハリスの長い「ブランコ」に分けられ、マルイカで出船している船宿のHPなどには、「潮が速い時はブランコ、遅い時は直結がよい」などの記載があるところもあるようです。
カワハギ釣りでは・・・
もう随分前に出版された本に、あるカワハギ名人の方が紹介されていて、その方はオモリを海底から切る、いわゆる縦の釣りのエキスパートの方でした。
その方は、太めのイトで短めのハリスの仕掛けを使い、潮の速い時はハリス6cm、潮の遅い時にはハリスを4cmにするという仕掛け図が掲載されていましたが、何故潮の速さによりハリスの長さが違うのかの記述はなく、当時ビギナーだった僕は戸惑ったものでした。
この二つの釣り物で共通するところ、それは、「潮が速い時はハリスを長く、潮が遅い時はハリスを短く」です。
最もこれは、ターゲットの活性やサイズ、カワハギの場合は夏か冬などのシーズンの違い、また、その他の複雑な要素を除いた、おしなべてその釣り物が安定して釣れるシーズン中ということになるかと思います。
ここで、あくまでも人間サイドでですが考えられること、それは・・・
・長いハリス=自由度が多い=海中ではより自然?=獲物にとって違和感が少ない?
ということは、獲物が釣り手に発信する「アタリ」としての変化も小さいのではないか。
・短いハリス=自由度が少ない=海中では不自然?=獲物にとって違和感が多い?
ということは、獲物が釣り手に発信する「アタリ」としての変化は大きいのではないか。
等でしょうか。
そしてマルイカの場合を考えてみると、潮の流れが遅い時、海中にいるマルイカはあまり潮に流されることなく仕掛けに付いたスッテに接近することでき、ホバリングしながらスッテとの間合いを詰めやすく、ほぼイメージ通りにスッテを襲えるのではないでしょうか。
逆に速い潮の時、仮に長めのハリスではなく短めのハリスの仕掛けを使った場合、マルイカは速い潮の中を泳ぎながらスッテを襲おうと仕掛けに接近、当然速い潮の為、その場でホバリングして海中の一点に止まろうともとも不安定な状態、仕掛けも潮の流れの影響を受けていて不安定、そのとき船がウネリで動いたりすると、幹イトとほぼ同じ動きをするスッテでは、これからスッテに襲い掛かろうとするマルイカにとって、あたかも揺れる馬上から飛ぶ鳥を弓矢で射るかのごとく難しいのではないでしょうか。
その考え方をまとめてみると、マルイカが同じ活性だとすると、潮の遅い日はマルイカにとって意としたスッテの襲い方ができ、スッテを抱いた後も潮に流されにくくアタリが出にくいのではと考えることができます。
そう考えると、よりハリスの短い仕掛けの方がアタリが出やすくマルイカを掛けやすいのではないでしょうか。
片や潮の速い日、潮に流されながらスッテを襲うマルイカ、自由度の多い仕掛けの方がスッテを襲いやすく、そのスッテを襲った刹那、一瞬潮に流されてしまったりと、アタリも出やすいのではと考えられます。
以前はよくあった運動会でのパン食い競争を想像してみて下さい。
目の前に、ローブからぶら下がっているパンがあるとします。
もしメインのロープに直結仕掛けのようにパンが付いていて、そのロープが揺れていたら食べにくいですよねぇ。
でも、エダスのような細引きのローブにぶら下がっていれば、多少揺らされても、その細引きのロープの長さの余裕分がある為、目の前で一瞬止まったパンを頬張れる可能性が高くなりますよね、きっと!