〈林〉スッテのカンナ
魚やイカなどを釣り上げる時、竿を手に持っている釣り人から獲物までを結ぶイト、仕掛けの先に鈎があり、一部の例外を除き、鈎は獲物との重要な接点であり、それが故、多種多様な条件を加味、考慮した、その目的の獲物を獲るための数々の釣鈎が、釣具屋さんに行くと一目瞭然、売り場の一角にあるものです。
イカ、マルイカを釣る為のスッテに使われる鈎、それは「カンナ」と呼ばれ、一本の真っ直ぐな状態で両端を鋭利にしてあり、それを二つ折りにした状態、丁度ヘアピンのような形状で市販されています。
まだカンナを取り付ける前のスッテの下部にその二つ折りのカンナを数組、Uの字に曲がっている方、鋭い隣合った二本の鈎先と反対の方をあてがいイトを巻き固定、その後カンナを一本づつ、パイプ状の先を持つ専用の道具を使い折り曲げていきます。
なので、4組のカンナを巻いたのなら8本立て、5組のカンナなら10本立てになるわけです。
そのカンナの付いたスッテ、特に直ブラやブランコ仕掛けの場合、投入器に収納する際はスッテを下にして投入器に入れていきます。
船長の投入合図と共に海に投げ入れられたオモリに引っ張られ、海中に仕掛けが沈んで行くわけなのですが、このとき投入器の内部にスッテのカンナが引っ掛かる方向に引っ張られ飛び出していく為、時としてスッテの先がごく小さく曲がってしまう「メクレ」が生じてしまうことがあります。
カンナのメクレは仕掛け投入時、船縁との干渉などでも起こることが考えられ、そのメクレたままのカンナの先では、いざマルイカを掛けようにも、イカの身に刺さり難いどころか、場合によっては滑ってしまい、アワセた瞬間は確かにイカの重さは感じたものの、次の瞬間竿先は虚空を仰ぐことになってしまいます。
「なぁ~に、カンナは10本あるんだから、1本や2本刺さらなくったって、ど~てこと無いんじゃないの!?」
確かにそれも一理です。
何もそんなに神経質にならなくてもですね。
ただ個人的には、その1本のメクレたカンナのスッテで釣り進めて行った時、 「今アワセ損ねてしまったのは、さっきのメクレたカンナのせいではないか・・・?それが当りスッテであったなら・・・、もし今もう一度アタリがきて、またアワセ損ねてしまったら・・・、イカを散らしてしまうかもしれないし・・・」などという、釣りに迷いが生じる要素を払拭したいが為に、船上にシャープナー(鈎砥用の砥石)を持ち込み、外側にメクレてしまったカンナにシャープナーをあて数回砥ぎ、鋭利なカンナの先を復活させます。
カンナの先は魚釣りの鈎のように、ごく硬く焼きが入ってはいないようで、シャープナーを数回動かすだけで、元の鋭利さを取り戻せます。